解約通知を受け取ってから、退去立会いの日が決まるまでに何回電話をかけているでしょうか。入居者は日中つながらず、折り返しは担当者が別の物件にいる時間に来る。ようやく決めた日が引越し業者の都合で動き、原状回復の業者や次の入居者の内見予定まで組み直す。賃貸管理の担当者にとって、退去立会いは「当日の確認」より「日程を決めるまで」に手間がかかる業務になりがちです。

先に答えをまとめると、退去立会いの日程調整をWeb予約にするときは、次の3つを決めます。

  • 解約の受付と同時に、立会いの候補枠を入居者に選んでもらう。担当者が日程を提案して返事を待つ形をやめ、退去日(明け渡し日)を基準に選べる枠だけを表示する
  • 立会いを退去日と同じ日にするか後日にするかを、物件と時期で決めておく。同日なら鍵の返却と確認が一度で済み、後日なら空室の状態で落ち着いて確認できる
  • 当日の確認項目と記録の書式を、予約の前に決めておく。国土交通省のガイドラインが示すとおり、入居時の記録と照らし合わせ、「損傷があることの確認」と「費用負担の了承」を分けて記録する

以下、日程調整で手間が増える理由、解約受付から立会いまでの流れ、予約枠の決め方、当日の確認と記録、入居者への連絡、導入の順番、起こりやすい失敗を順に整理します。

退去立会いの日程調整で、なぜ手間が増える?

「入居者・立会い担当者・原状回復の業者」の3者の予定が、退去日の前後に集中するからです。電話で1件ずつ候補日を出し合う形だと、誰か1人の予定が動くたびに調整がやり直しになります。

日程が決まるまでに起きやすいことを並べると、次のようになります。

起きること理由Web予約で変えられること
電話がつながらず、候補日の連絡が往復する入居者は日中働いており、担当者は外出が多い入居者が空いた時間に枠を選べる
退去日と立会い日がかみ合わない引越し日が後から決まる、または変わる退去日を入れると、その日を基準にした枠だけが出る
3月・4月に担当者の予定が埋まる退去と入居が同じ時期に重なる担当者ごと・日ごとの枠数を先に決めて上限を超えないようにする
立会いの後の工事や内見の予定が組めない立会い日が確定するのが遅い予約が確定した時点で、工事・内見の担当へ同じ日付が届く

賃貸仲介の側でも繁忙期の内見予約は同じように詰まります。予約枠と鍵の受け渡しの考え方は、不動産の繁忙期、内見予約の枠と鍵の管理をどう仕組み化する?|賃貸仲介向けで扱っています。

解約の受付から立会いまで、どんな流れにする?

解約の受付、退去日の確定、立会い枠の選択、前日の確認連絡、立会い当日の記録の5段階にします。解約の受付画面の最後で立会い枠を選んでもらうと、電話で日程を決める工程がなくなります。

賃貸の退去立会いをWeb予約にする5段階の流れを示す図。解約の受付、退去日の確定、退去日を基準にした立会い枠の選択、前日の確認連絡、当日の確認と記録の順に進み、予約が確定した時点で原状回復の業者と次の内見の担当に日付が共有されることを示す。賃貸の退去立会いをWeb予約にする5段階の流れを示す図。解約の受付、退去日の確定、退去日を基準にした立会い枠の選択、前日の確認連絡、当日の確認と記録の順に進み、予約が確定した時点で原状回復の業者と次の内見の担当に日付が共有されることを示す。
  • 解約の受付: 契約者本人であることを確認し、解約の申し出を受け付ける。解約予告の期間(「1か月前まで」など)は契約書の記載に合わせて画面に示す
  • 退去日の確定: 入居者に退去日を入れてもらい、契約上の解約日との関係を確かめる
  • 立会い枠の選択: 退去日を基準に選べる枠だけを表示し、入居者が1つ選ぶ。同時に連絡のつく電話番号と、当日立ち会う人を入れてもらう
  • 前日の確認連絡: 立会いの日時、所要時間の目安、当日用意してほしいもの(返却する鍵など)を送る
  • 当日の確認と記録: 入居時の記録と照らし合わせて確認し、記録を入居者と共有する

3段階目で予約が確定したら、原状回復の業者と次の入居者募集の担当にも同じ日付を知らせます。立会いの日が決まらないと、工事の手配と内見の再開日が決められないためです。

解約の申し出そのものをチャットやフォームで受け付ける設計は、賃貸管理の入居者問い合わせをチャットボットで自動化する方法で取り上げています。この記事の流れは、その受付の後ろにつなげる形です。

立会いの予約枠はどう決める?

退去日と同じ日に立ち会うか、後日に立ち会うかをまず決め、そのうえで1件あたりの所要時間と、担当者1人が1日に回れる件数から枠を作ります。

方式向いている場面気をつけること
退去日と同じ日に立ち会う鍵の返却と確認を一度で終えたい、入居者が遠方へ引っ越す引越しの作業が終わる時刻に合わせる必要があり、午後の遅い枠に予約が集中しやすい
退去日の後日に立ち会う家具が搬出された空室で落ち着いて確認したい鍵の返却方法(郵送・持参など)を別に決める。入居者が再訪できない場合がある

枠の長さは、間取りと担当者の実際の所要時間から決めます。最初の1か月ほどは、立会いごとに開始と終了の時刻を記録し、それをもとに枠の長さを見直すと、次の予約が押す事態を減らせます。移動がある場合は、物件間の移動時間も枠に含めます。

3月・4月のように退去が集中する時期は、担当者ごとの1日の上限件数を先に決めておきます。上限に達した日は選べないようにすると、予約を受けすぎて当日に別の担当者を探す、ということが起きにくくなります。

立会い当日は何を確認し、どう記録する?

入居時の記録と照らし合わせて、部屋ごと・部位ごとに損耗の状況を確認し、写真とあわせて残します。署名をもらう書面では、「損傷があることの確認」と「費用を誰が負担するかの合意」を分けて書きます。

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(平成23年8月)は、トラブルの大きな原因として入居時・退去時の物件の確認が不十分であることを挙げています。そのうえで、入居時と退去時にチェックリストを作り、当事者が立ち会って部位ごとの状況を確認すること、平面図への記入や写真などを併せて使うことを示しています。様式として「入退去時の物件状況及び原状回復確認リスト(例)」もWord形式で公開されています(国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版))。

同じガイドラインのQ&Aでは、退去時の立会いで損傷があることを確認してサインした場合でも、単に損傷があることの確認であれば、費用負担を了承したものではないと考えられる、と説明しています。立会いの記録を作るときは、次のように欄を分けておくと、後から精算の内容を説明するときに迷いません。

  • 確認の欄: 部屋・部位ごとに、入居時の状態、退去時の状態、写真の番号
  • 負担の欄: 費用の負担について、その場で合意したか、後日の見積もりで説明するか
  • 共有の欄: 記録の控えをいつ、どの方法で入居者に渡したか

費用の負担割合は、契約書の内容(特約を含む)とガイドラインに沿って判断する事項です。立会いの担当者がその場で金額を言い切らず、精算は見積もりを示して説明する、という運用にしておくと、当日の説明が担当者ごとにばらつきません。

入居者には何を、いつ送る?

予約が確定したとき、立会いの前日、立会いが終わったときの3回です。前日の連絡には、当日用意してほしいものと、遅れる場合の連絡先を入れます。

送るとき入れる内容
予約の確定時立会いの日時と住所、所要時間の目安、日時を変更する場合の手続き
立会いの前日日時の再確認、返却する鍵の本数、遅れる・来られない場合の連絡先
立会いの終了後確認の記録の控え、精算の見積もりを送る時期

以下は賃貸管理会社を題材にした記入例で、実在の会社の文面ではありません。自社の契約内容と言葉づかいに置き換えて使ってください。

文例: 「〇〇様、明日10月20日(月)14時から、△△マンション302号室の退去立会いにうかがいます。所要時間はおよそ30分です。お預けしている鍵(2本)をご用意ください。ご都合が悪くなった場合は、本日18時までにこのメッセージへご返信ください。」

内見予約のリマインドと同じく、前日の連絡は日時を変えたい人が早めに申し出られるようにするためのものです。前日・当日の2段階の確認の組み立ては、不動産の内見キャンセル・無断キャンセル対策|リマインド設計と反響対応の両立が参考になります。

導入はどの順番で進める?

記録の書式を決める、枠の作り方を決める、解約受付の画面に枠の選択をつなぐ、業者・募集担当への共有をつなぐ、の4段階です。

  • 記録の書式を決める: 入居時と退去時で同じ部位の一覧を使う書式にする。国土交通省の確認リスト(例)を下敷きにすると、部位の漏れを減らせる
  • 枠の作り方を決める: 同日か後日か、1件の長さ、担当者ごとの1日の上限を決める
  • 解約受付の画面に枠の選択をつなぐ: 退去日の入力の後に枠を表示し、選んだ枠で予約を確定させる
  • 業者・募集担当への共有をつなぐ: 予約の確定と変更が、原状回復の業者と入居者募集の担当に届くようにする

入居時の記録が紙のままの物件が多い場合は、まず新しく入居する方から同じ書式で記録を取り始めます。退去のたびに過去の紙の記録を探す手間は、入れ替わりが進むにつれて減っていきます。

どこでつまずきやすい?

「枠を開けすぎて担当者が回りきれない」「退去日の変更が立会いに反映されない」「確認と費用負担を1つのサインで済ませる」の3つです。

失敗例1: 繁忙期も平常時と同じ枠を開けたままにする。 3月の土日に予約が集中し、担当者1人で回れない件数が入ります。担当者ごとの1日の上限を決め、上限に達した日は選べないようにします。

失敗例2: 入居者が退去日を変えても、立会いの予約がそのまま残る。 引越し日が延びたのに立会いだけ元の日に来てしまい、部屋に荷物が残っていて確認できません。退去日を変更する画面から、立会いの予約も選び直せるようにします。

失敗例3: 立会いの書面で、損傷の確認と費用負担の合意を1つの署名欄にまとめる。 後日、精算の金額を見た入居者から「費用負担まで了承したつもりはない」と言われ、説明に時間がかかります。確認の欄と負担の欄を分け、どこまで合意したかを書面に残します。

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よくある質問

Q. 退去立会いは退去日と同じ日にするべきですか?

A. どちらにも利点があります。同じ日なら鍵の返却と確認が一度で済み、後日なら家具が搬出された空室で落ち着いて確認できます。入居者が遠方へ引っ越す物件や時期は同日、確認に時間がかかる広い物件は後日、のように物件と時期で決めておきます。

Q. 退去立会いの日程はいつまでに決めればよいですか?

A. 解約の受付と同時に決めるのが、調整の往復を減らす方法です。解約の申し出の画面で退去日を入れてもらい、その日を基準にした立会い枠を選んでもらうと、受付の時点で日程が確定します。

Q. 立会いの確認書にサインをもらえば、費用負担も決まりますか?

A. 国土交通省のガイドラインのQ&Aでは、単に損傷があることを確認したサインであれば、費用負担を了承したものではないと考えられるとしています。書面では確認の欄と費用負担の欄を分け、どこまで合意したかを残しておきます。

Q. 立会いの当日に何を記録すればよいですか?

A. 部屋・部位ごとの入居時と退去時の状態、写真の番号、費用負担についての合意の有無、記録の控えを入居者に渡した方法です。国土交通省が公開している「入退去時の物件状況及び原状回復確認リスト(例)」を下敷きにすると、部位の漏れを減らせます。

まとめ

  • 立会いの日程は、解約の受付と同時に入居者に枠を選んでもらって決める
  • 退去日と同日か後日かを物件と時期で決め、担当者ごとの1日の上限を設ける
  • 予約が確定したら、原状回復の業者と募集の担当にも同じ日付を共有する
  • 当日は入居時の記録と照らし合わせ、確認の欄と費用負担の欄を分けて記録する
  • 入居者への連絡は、予約の確定時・前日・終了後の3回

まず、直近10件の退去について、解約の受付から立会いの日が決まるまでに何日かかり、何回連絡を取ったかを書き出してみてください。連絡の回数が多い案件ほど、枠を選んでもらう形にしたときに減らせる手間が大きい案件です。解約の受付から予約、入居者への連絡までをまとめて扱う仕組みは、不動産向けの予約・顧客管理システムで紹介しています。