問診票は紙のファイル、予約は手書きの台帳かLINE、施術の記録はカルテ。整骨院・整体院では、患者さんの情報の置き場所がこうして分かれていることがよくあります。「最近あの方を見かけない」と気づいても、最後にいつ来院したのか、連絡してよい方なのかを確かめるだけで、ファイルを何冊もめくることになります。

結論から書くと、整骨院・整体院の顧客管理は次の3つを決めるところから始まります。

  • カルテとは別に「来院と連絡の台帳」を持つ。施術の中身はカルテ、来院日・次回予定・連絡の可否は台帳と役割を分けると、受付も院長も同じ一覧を見て動ける
  • 記録する項目は5種類に絞る。基本情報、来院履歴、次回予定、連絡の同意、来院のきっかけ。最初から細かくすると記入が続かない
  • 症状や既往歴は扱いを分ける。病歴は個人情報保護法の「要配慮個人情報」に当たり、取得には原則として本人の同意が要る。台帳には書き写さず、見られる人を限る

以下、カルテとの分け方、記録する項目、健康に関する情報の扱い、紙・Excel・予約と一体の管理の選び方、来院が途切れた方への確認の仕方、導入の順番、起こりやすい失敗を順に整理します。

顧客管理とカルテは何が違う?

カルテは「どんな施術をしたか」を残す記録、顧客管理の台帳は「いつ来て、次はいつで、どう連絡するか」を残す一覧です。目的が違うので、書く人も見るタイミングも変わります。

カルテは施術者が施術のたびに書き、次に担当する施術者が経過を追うために読みます。台帳のほうは、受付が予約を取るとき、院長が来院状況を確かめるとき、スタッフが次回予約の声かけをするときに開きます。

観点カルテ(施術記録)顧客管理の台帳
主に書く人施術者受付・施術者・院長
書くタイミング施術のたび予約・来院・連絡のたび
中心になる情報主訴、施術内容、経過、次回の方針来院日、次回予定、連絡先と連絡の可否、来院のきっかけ
主な使い道施術の引き継ぎ、保険請求の根拠予約の確認、来院が途切れた方の把握、紹介元の振り返り

両方を1冊のファイルにまとめている院では、「次回の予約が入っていない方を一覧で見たい」と思ったときに、全員分のカルテを開かないと分かりません。台帳を分けておけば、来院日と次回予定の列を見るだけで済みます。カルテ側の記録項目や複数スタッフでの共有は、整骨院のカルテ・施術記録管理|複数スタッフの引き継ぎ漏れを防ぐ仕組みで整理しています。

整骨院・整体院のカルテと顧客の台帳の分担を示す図。左のカルテには施術者が主訴と症状の変化、施術内容、次回の施術方針、既往歴など健康に関する情報を書き、右の顧客の台帳には受付・院長が基本情報、来院履歴、次回予定と提案した通院間隔、連絡の同意と来院のきっかけを書く。両者は同じ患者として紐づけ、症状・既往歴は同意を得てカルテ側で扱うことを示す。整骨院・整体院のカルテと顧客の台帳の分担を示す図。左のカルテには施術者が主訴と症状の変化、施術内容、次回の施術方針、既往歴など健康に関する情報を書き、右の顧客の台帳には受付・院長が基本情報、来院履歴、次回予定と提案した通院間隔、連絡の同意と来院のきっかけを書く。両者は同じ患者として紐づけ、症状・既往歴は同意を得てカルテ側で扱うことを示す。

顧客の台帳には何を記録する?

基本情報、来院履歴、次回予定、連絡の同意、来院のきっかけの5種類です。1人1行で並べ、予約や来院があるたびに更新します。

種類記録する内容の例使う場面
基本情報氏名、ふりがな、電話番号、メールアドレスまたはLINEの登録有無、生年月日予約時の本人確認、同姓同名の区別
来院履歴初回来院日、直近の来院日、累計の来院回数、担当者通院が続いているかの確認
次回予定次回の予約日、または「2週間後を目安に案内済み」などのメモ予約の入れ忘れ・声かけ漏れの確認
連絡の同意お知らせを送ってよいか、連絡してよい手段と時間帯案内を送る前の確認
来院のきっかけGoogleマップ、紹介(紹介者名)、看板、チラシ、ホームページなど新規の入口ごとの振り返り、紹介者へのお礼

来院履歴は 「回数」と「直近の日付」の両方で持つ のがポイントです。回数だけでは、10回通って半年来ていない方と、3回目で先週来た方の区別がつきません。

項目は増やしすぎないほうが続きます。住所や職業を保険施術の書類で別に管理しているなら、台帳に重ねて書く必要はありません。迷ったら、「この列を見て、誰が何をするか」を言えない項目は外す、という基準で絞ってください。

症状や既往歴は台帳に書いてもいい?

書くなら、本人の同意を得たうえで見られる人を限って扱います。病歴は個人情報保護法の「要配慮個人情報」で、法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意を得ずに取得してはならないとされています。

個人情報保護法は、本人の病歴などを「要配慮個人情報」と定め(第2条第3項)、法令に基づく場合などの例外を除いて、あらかじめ本人の同意を得ないで取得してはならないとしています(第20条第2項。個人情報の保護に関する法律(e-Gov法令検索))。問診票で既往歴や通院中の病気を聞いている院は、すでにこの種類の情報を受け取っています。

院内では、次の3点を決めておくと扱いがそろいます。

  • 問診票に利用目的と同意欄を置く: 「施術の判断と経過の確認に使います」のように何のために聞くのかを書き、署名や同意のチェックをもらう
  • 台帳には書かず、カルテ側に置く: 予約の受付に病歴は要りません。台帳は来院と連絡の情報に限り、健康に関する情報はカルテで管理する
  • 見られる人を決める: 紙なら保管場所と鍵、システムならスタッフごとの閲覧権限で分ける

個人情報の取り扱い全般の考え方は、個人情報保護委員会の個人情報保護法ガイドライン(通則編)にまとまっています。問診票の文面や院内掲示を見直すときの参照先にしてください。

紙・Excel・予約と一体の管理、どれで始める?

台帳を見るスタッフの人数で選びます。院長1人で受付も施術もしている院なら紙やExcelでも回りますが、複数人が同時に見るなら予約と一体の管理のほうが転記が減ります。

方法向いている院始めやすさ続けるうえでの注意
紙の台帳院長1人で受付も施術もしている今日から始められる「次回予約がない方」を探すには全ページを見る必要がある
Excel・スプレッドシート院長と受付1〜2人で、パソコンで予約を管理している列を決めればすぐ使える予約表と台帳が別だと、来院日を二重に入力することになる
予約と一体の顧客管理施術者が複数いる、Web予約やLINE予約を受けている移行の手間がかかる予約と来院の記録から来院履歴が更新されるので、転記が要らない

どの方法を選んでも、台帳の列(記録する項目)は同じにしておくと、後から別の方法へ移すときに困りません。予約システムの種類と比べ方は、整骨院・整体院の予約システムの選び方・費用比較で取り上げています。

台帳を再来院の確認にどう使う?

「次回予定が空欄」「提案した通院間隔を過ぎた」方を週に1回抜き出し、案内ではなく体調の確認として連絡するのが基本の使い方です。

何日空いたら連絡するかは、院の施術計画によって変わります。週1回の通院を提案している方と、月1回のメンテナンスで通っている方を同じ日数で区切ると、連絡が早すぎたり遅すぎたりします。台帳に「提案した通院間隔」の列を1つ足し、その間隔を過ぎた方を抜き出すと、患者さんごとの基準になります。

連絡の文面は、売り込みにならないよう確認から入ります。以下は整体院を題材にした記入例で、実在の院の文面ではありません。自院の施術計画と言葉づかいに置き換えて使ってください。

文例: 「〇〇様、前回のご来院から3週間ほど経ちましたが、その後の腰の具合はいかがでしょうか。ご予約は院の予約ページか、このLINEへの返信で承ります。」

送る前には、台帳の「連絡の同意」の列を確認します。メールで新しいメニューや割引など宣伝を含む案内を送る場合は、特定電子メール法により原則として受信者の事前の同意が必要で、送信者の名称や受信拒否の連絡先なども表示しなければなりません(迷惑メール相談センター「特定電子メール法」)。予約の案内を添えた文面も宣伝にあたる場合があるため、メールで送るのは同意を得た方に限っておくと迷いません。

来院が途切れた方への連絡の組み立ては、業種を問わない形で休眠顧客を掘り起こす自動フォローの作り方にまとめています。通院を続けてもらう工夫全体は、整骨院のリピート率を上げる方法が参考になります。

導入はどの順番で進める?

列を決める、今通っている方を移す、予約と来院のたびに更新する、週1回抜き出す、の4段階です。

  • 列を決める: 上の5種類に「提案した通院間隔」を加えた列を作る。紙なら表の見出し、Excelなら1行目に並べる
  • 今通っている方を移す: 全員を一度に移さず、直近3か月に来院した方から入れる。それより前の方は、次に来院したときに追加する
  • 予約と来院のたびに更新する: 会計のタイミングで「直近の来院日」と「次回予定」を書き換える。更新する担当を決めておく
  • 週1回抜き出す: 曜日を決め、次回予定が空欄の方と提案間隔を過ぎた方を一覧にし、誰が連絡するかを割り振る

「今通っている方を移す」の段階で過去の記録まで全部移そうとすると、そこで作業が止まりがちです。台帳はまず「今通っている方を追える」ことが大切で、古い記録の整理は後からでも間に合います。

起こりやすい失敗は?

「台帳とカルテに同じことを書く」「更新する人が決まっていない」「同意を確かめずに一斉に送る」の3つです。

失敗例1: 台帳にもカルテにも症状を書き、二重管理になる。 どちらが新しい情報か分からなくなるうえ、要配慮個人情報が受付の目に触れる範囲にも広がります。症状と施術はカルテ、来院と連絡は台帳、と書き場所を一つに決めます。

失敗例2: 更新の担当を決めないまま始める。 院長が施術に追われて記入を後回しにした日の分から、台帳の来院日が実際とずれていきます。会計を担当する人が更新する、と業務の流れに組み込みます。

失敗例3: 来院が途切れた方全員に同じ案内を一斉送信する。 連絡を望んでいない方にも届き、宣伝を含むメールなら同意の確認も欠けます。抜き出した一覧を「連絡の同意」の列で絞り、文面も通院間隔ごとに分けます。

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よくある質問

Q. 整骨院の顧客管理とカルテは一つにまとめてもよいですか?

A. まとめることもできますが、次回予約が入っていない方を確かめたいときに全員分のカルテを開くことになります。施術の中身はカルテ、来院日・次回予定・連絡の同意は台帳と分けると、受付でも同じ一覧を見て動けます。

Q. 顧客の台帳には最低限どんな項目が必要ですか?

A. 基本情報、来院履歴(初回・直近の来院日と回数)、次回予定、連絡の同意、来院のきっかけの5種類です。来院履歴を回数と直近の日付の両方で持つと、通院が途切れた方を見分けられます。

Q. 問診で既往歴を聞くときに同意は必要ですか?

A. 病歴は個人情報保護法の要配慮個人情報に当たり、法令に基づく場合などを除いて、あらかじめ本人の同意を得ずに取得してはならないとされています。問診票に利用目的と同意欄を置いておくと、同意を得た記録が残ります。

Q. 来院が途切れた方には、どのくらい空いたら連絡すればよいですか?

A. 一律の日数より、院が提案した通院間隔を基準にするほうが患者さんごとの状況に合います。台帳に提案した間隔の列を設け、その間隔を過ぎた方を週1回抜き出して、体調の確認として連絡します。

まとめ

  • 顧客管理の台帳はカルテと分け、来院と連絡の情報に絞る
  • 記録するのは基本情報・来院履歴・次回予定・連絡の同意・来院のきっかけの5種類
  • 症状や既往歴は同意を得てカルテ側で扱い、見られる人を限る
  • 次回予定が空欄の方と、提案間隔を過ぎた方を週1回抜き出して確認の連絡をする

手始めに、今週来院した方の名前を書き出し、それぞれ次回予約が入っているかどうかを横に書いてみてください。空欄の数が、台帳で追うべき方の数です。予約と来院履歴を同じ画面で扱う仕組みは、整体院・整骨院向けの予約・顧客管理システムで紹介しています。